2023年07月30日

交響曲第7番「未完成」(シューベルト D.759)その2

第14回定期演奏会ではシューベルト作曲の
交響曲第7番「未完成」(D.759) を取り上げます
シューベルトにはこの曲を含み4曲の未完成交響曲が
あるのですが、この稿では D.759 の作品の事とします

この曲については 2018.06.09付ブログ記事
一度書いているのですが、今回は第2楽章も含めた
完成分全楽章を演奏するにあたり追加したい話を
書いておきたいと思います。

今回演奏会パンフレットに掲載された曲目解説の
原文を載せます。(前述過去ブログ記事からの再構成です)

<以下パンフレット掲載文章>

今回の定期演奏会ではシューベルト作曲の交響曲第7番、所謂「未完成交響曲」を取り上げます。
加東フィルにとりましては2018年の加東混声合唱団第11回定期演奏会で
第1楽章を取り上げて以来の再演になるのですが、今回は第2楽章と合わせて
完成分全楽章を演奏いたします。
シューベルトが31歳の若さで亡くなった事と「未完成」と呼ばれていることから、
病魔と闘いながら作曲して力尽きた・・・というように想像されますが、
本作の作品番号(ドイチュ番号)では759番(D 759)でして、990番台まで番号があることと、
本作以後にも第8番の交響曲「ザ・グレート」(D 944)を書き上げていますので、
本作は第3楽章を書いていた途中で後が続かなくなり、その間に他の曲がどんどん創作され、
この曲を作りかけていたことすら忘れてしまったということが実際の所です。
(本作の初演はシューベルトの没後から37年経過しています)
シューベルトの交響曲はベートーベン/ブラームスの交響曲のような短いフレーズを積み上げて
大伽藍を構成するのではなく、「歌曲王」と呼ばれるだけあって、メロディの移ろいを
楽しむようなところがあり、後の作曲家ではドボルザークの交響曲にもその傾向が見られます。
チェロとコントラバスによる重々しい序奏から始まり緊張感のある第1主題とチェロが奏でる
穏やかな第2主題が交互に現れる第1楽章、上昇系の音形が消え入るように奏でられる所と
荘厳に演奏される所が交互に現れて消え入るように終わる事でどのように次の楽章へ
繋げるつもりであったのか色々想像できそうな第2楽章から成る本作をお楽しみください。

<ここまで>

パンフレットでは字数の関係で盛り込むことが出来なかった
補足の話を書いておきたいと思います。

第3楽章最初8小節間の序奏がシューベルト自身で
オーケストラ総譜として書かれており、そのあと暫くの間
ピアノ譜形式で書かれていますが途中で終わっています

色々な解説でも指摘されている通り、ここまで
第1楽章 4分の3拍子
第2楽章 8分の3拍子
第3楽章 4分の3拍子
全て3拍子で書かれていたのが
未完成で終わった原因とされています

確かに交響曲には3拍子の楽章を含んでいる事が多いのですが、
ドボルザーク交響曲第8番の第3楽章について書いた記事でも
触れているように、交響曲においては目先を変えるために
3拍子で書いた楽章を置いている事が殆どです。
そのため第1・2楽章を3拍子で書いて、3楽章も3拍子で
書き始めてしまったので第4楽章へどのように繋げれば
良いのかわからなくなったというのが一説として考えられます

ベートーベン「英雄」シューマン「ライン」のように
第1楽章が3拍子で始まる曲もありますが、
それでも3拍子は全体の半分という所です。

ところで、「未完成」の第1・2楽章は確かに3拍子で
書かれているのですが踊れる「舞曲」ではありません。
2小節合わせて2拍子的な(8分の6拍子的な)動きや、
2小節合わせて3拍子的な動き、さらにはシンコペーションを
組み合わせる事で単調にならないような工夫がなされています。
ある意味、3拍子だけで交響曲を作ろうとしていたのかも知れません
果たしてこの説はあっているのでしょうか (^^;)

 次の話題に入ります

img030.jpg

上記譜例は第2楽章冒頭部です。(c音楽之友社)
ファゴットとホルンだけ表示していますが、
このほかにはコントラバスがピチカートの8分音符で
下降音階を弾いています

ここで1番ホルンは記譜上「ド〜レ〜ミ」と単純なのですが
"in E" 表記なので実音ではミ〜ファ#〜ソ#ですがこの稿では「ド〜レ〜ミ」とします)
元々バルブの付いていないホルンで演奏される前提で書かれているので
現代の楽器で演奏する場合でもバルブ操作を最小限にするのが望ましく
特にこのようなスラーが掛っている場合はバルブ操作が「滑らかに」
演奏するのを妨げるので指遣いを変えずに演奏する必要があります
具体的にはF管の2番バルブ開放(中指キィ押し)だけで
ド〜レ〜ミを演奏する事になります。

ここで「ド〜レ」はクレッシェンドなので普通に息を吹き込むだけで
演奏出来るのですが、「レ〜ミ」はディクレッシェンドなので
音を上げるための操作と音量を下げる操作がある意味相反する
処理になるので気を遣うところです
(2番ホルンはミ〜ソに上がった後、ソのままディクレッシェンド)

この演奏法をどのように例えれば分かって頂けるのか考えたのですが
「ホースで水を出す」事を例にとりますと水量が音量、
水の勢いが音の高低で例えられることに気付きました。(^^;)

蛇口元栓の開き具合が同じでも、ホースの先を少しつまんで
出口を細めると水の勢いが増します。逆にホース先の
つまんだ所を緩めると水の勢いは弱まります。
ホース先のつまみ具合が同じでも元栓を閉めようとすれば
水の勢いは弱まります

「ド〜レ」はクレッシェンドしながら音を上げていくので
水道の元栓を開きながらホース先をつまめば良いのですが、
一方「レ〜ミ」はディクレッシェンドなので元栓は閉めながら
ホース先はつまみ具合を上げて出口をより細くしなければ
水の勢いは落ちる訳で、そのコントロールが難しい訳です。

いざとなればバルブ切替でも良いのかも知れませんが
切替時にどうしても音の切れ目が生じます
この譜例でも分かるように他の音が少ない状況で
一番高い音を担当する事になるので、ド〜レ〜ミを
滑らかに演奏できるよう気を遣う必要があります。

非常に長々と局所的な解説で失礼しました(;^^)
 
posted by トトロ △◎/ at 17:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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